~マーク・ウィリアムズ博士からマインドフルネス認知療法を学ぶ~
―マインドフルネスフォーラム2016―
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うつ病の再発予防プログラムとして開発、その中核にあるマインドフルネスは高い注目を集める
マインドフルネス認知療法(Mindfulness-Based Cognitive Therapy, MBCT)は、シーガル博士、ウィリアムズ博士、ディーズデール博士が開発したうつ病の再発予防プログラムです。当初は認知療法の効果を維持することを目的としたプログラムを開発する予定でした。しかし開発されたプログラムは認知の転換を中核とするものではなく、マインドフルネスの枠組みに認知療法を組み入れたプログラムとなり、認知療法の介入プログラムとはかなり異なるものとなりました。そしてそのうつ病の再発予防効果が実証されたことにより大きな注目を集め、イギリスでは費用対効果の見込める予防プログラムとしてNICE(国立医療技術評価機構)によって推奨されています。
現在では、うつ病の再発予防を超えて様々な領域での効果が実証され、その応用範囲が拡大しています。
マインドフルネス認知療法(MBCT:Mindfulness-Based CognitiveTherapy)は、当初、うつ病の再発予防のためのプログラムとして、マーク・ウィリアムズ博士たちによって開発されました。しかし現在では、うつ病の再発予防を超えて様々な領域での効果が実証され、その応用範囲が拡大しています。例えば、より一般的な効果として、MBCTはポジティブな感情を増す、ネガティブな感情を減らす、人生のゴールの明確化を助ける、恐怖や不安を適応的に調整するという効果が示されています。またより専門的には、不眠症、社会恐怖症、全般的不安障害、パニック障害、一次診療での鬱のためのMBCT、および癌患者のためのMBCTが有望なものとして挙げられています。すなわち応用に関して非常に開かれた、展開可能性に富むプログラムといえます。
ヨーガや禅など東洋の行法から発展したマインドフルネス
MBCTのベースにあるのは、ヨーガや禅の行法を源とするマインドフルネス瞑想です。マインドフルネスはパーリ語の「サティ」を英訳した言葉です。英語では「注意する」「気をつける」という意味で、漢語では「念」、日本語では「気づき」と訳されます。万度フルネス瞑想を精神医療の領域に導入したパイオニアであるカバットジン博士は、マインドフルネスを「今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく、意図的に注意を向けることによってあらわれる気づき」と定義しています。このマインドフルネスは、現在では様々な心理療法に取り入れられ、世界的に注目を集めています。
8セッションのプログラムとマインドフルネス瞑想
MBCTは、以下の8回のセッションで構成されています。
- セッション1:自動操縦状態に気づく
- セッション2:うまくいかない時
- セッション3:呼吸へのマインドフルネス
- セッション4:現在にとどまる
- セッション5:そのままでいる
- セッション6:思考は事実ではない
- セッション7:自分を大切にする
- セッション8:これからに活かす
毎回のセッションでは、うつ病の再発に大きく関わる要素をとりあげています。しかしその内容は、うつ病の再発予防にしか活かせないものではなく、日常のストレスと上手な関係をとるための智慧と洞察に満ちています。
これらのセッションで用いられる瞑想法は大きく分類すると以下の5種類です。
1.呼吸瞑想:呼吸に注意を集中
2.静座瞑想:呼吸から全身、音、感覚、思いや感情に注意を集中
3.ボディースキャン:つま先から頭まで順番に注意を集中
4.ストレッチ瞑想:ストレッチ動作のなかで身体に注意を集中
5.生活瞑想:日常の生活動作に意識を集中(歩行、食事など)。
MBCTでは、こうした瞑想を通じてうつ病の再発予防に役立つストレスとの上手なつきあい方を身につけて行きます。マインドフルネス瞑想は、痛みや苦しみ、不安、悩みなどに振り回されず、今この瞬間瞬間を充実して生きていくことに役立ちます。
マーク・ウィリアムズ博士(J. Mark G. Williams)オックスフィード大学の臨床心理学名誉教授であり、オックスフォード・マインドフルネス・センター開設時には所長として活躍致しました(2008-2013)。マインドフルネス認知療法の開発者の一人であり、『マインドフルネス認知療法』(越川房子監訳/北大路書房)、『うつのためのマインドフルネス実践』(越川房子・黒澤麻美訳/星和書店)などが邦訳され多くの 人に読まれています。彼はまた、英国アカデミーおよび医学アカデミー会員、オックスフォード大学リナクル・カレッジの名誉校友、オックスフォード・クライ ストチャーチ大聖堂の名誉参事会会員でもあります。 |