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6 不安・ストレスを乗り越える知恵を育てる

若い人たちへ

不安・ストレスを乗り越える知恵を身に付ける

 

(中・高校生くらいの年齢の青少年を読者対象にして記載しています。保護者の皆様が、お子様にも読ませたいなと思われたときには、印刷してお子様にお渡しください。著作権は「とね臨床心理士事務所」にあります。無断複製、ネットへの転載、等はご遠慮ください。)

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今日は、どのようにすれば、日常的な不安やストレスを乗り越えていくことができるか、について述べてみます。少し逆説的なところもありますので、何度も読み返さなければ分かりづらい部分もあるかも知れませんが、少しの時間、お付き合いください。

 

  • 不安があるから、物事は上手くいく

 

不安は、不愉快な気分の最たるものですね。不安になると、いてもたってもいられないような、居心地の悪い、イライラした気持ちにもなりますね。どう考えても、よい気分とは言えません。そのため、不安は、表面的には自分の敵のように見えます。

 

しかし、実は不安は自分の敵ではなく、強い味方なのです。不安は、私たちが危機的状況に陥らないように、事前に色々なことを知らせてくれる警戒サインのようなものです。不安とは、何か危険な事が近づいているよ! 用心しなさい! 急いで対策を立てなさい! 具体的な準備をしなさい! 等を自分に教えてくれる、一種の危険予知能力のようなものかも知れません。

 

不安を異物視するのではなく、むしろ不安を味方につけ、不安を活かしてゆける知恵を、自分の中に育んでいくことは、中・高校生の頃から心がけておくべき、大切なことかも知れませんね。

 

  • 生活習慣を見直す

 

「早寝、早起き、朝ご飯。ゲームは止めて外遊び。」という標語がありますが、生活習慣を見直し、一日の生活が健康的なものになるように心がけることは、身体だけでなく心を健康に保つためにも大事な事柄です。

 

スマートフォンの操作に時間を取られるあまり、「朝、起きられない。」「授業中に眠くてしかたがない。」「睡眠不足で体調も最悪!」「やるべきことが終わらない!」「どうしよう、提出すべきものが仕上がらない!」等というケースに、最近、よく出会います。これは、中・高校生だけの問題ではなく、大人でもそうなってしまう人が結構多いのです。

 

「心身の不調」が「生活習慣の不調」から引き起こされていることも、よくある話です。健康な生活をすれば、身体だけではなく、心も健康になります。心身が健康であれば、少々の困難やストレスの多い場面に出会っても無事に乗り越えられますよ。

 

  • 目の前の重要な事柄に力を集中する

 

昔読んだ本に書いてあった、ある企業の経営者の話です。その経営者は、やるべき事が目の前に山積みになってしまい、そのストレスに悩んでいました。そこで、ある有名な経営コンサルタントのところに相談の手紙を出したそうです。高額の相談料を支払った後、教えてもらった秘策は、次の事だったそうです。

 

「寝る前に、やるべきことをリストアップして、その中から自分にしかできない事柄を3つだけ選び出し、明日、目覚めたら、その日の内に確実にやり終えるようにしなさい。できれば午前中に。自分でなくてもできる周辺の事柄は、有能な部下にまかせなさい。明日から、この方法をしばらくの間、続けていきなさい。」

 

経営コンサルタントからの返信には、それしか書いてなかったそうです。

 

「こんなに高い相談料を支払ったのに、アドバイスはこれだけ?」

 

と、その経営者は思ったそうですが、教えられた通り、自分にしかできない3つの事柄だけに絞って、その日の仕事を終わらせているうちに、しばらくすると、ほとんどの重要な案件が片付いてしまい、仕事上のストレスもどこかに吹っ飛んでしまったそうです。経営者が元気になったのですから、その企業の経営状態が改善したことは、言うまでもありません。

 

読者の皆様方も、今、やらなければならないことは沢山あるかも知れませんが、それらを一度に全部やろうとせず、目の前の重要なことがらだけを3つだけ選び出して、その日の内に仕上げてしまうという習慣を身に付けるようにしてはどうでしょう。毎日の充実し、身に付けたその習慣は、きっと将来のあなたの人生を成功に導いてくれるのではないでしょうか。

 

  • スケジュールを立て、少しずつ、確実に前進する

 

行き当たりばったりでやるよりも、やるべきことをスケジュール化して一つ一つこなしていく方が、ストレスは格段に少なくなります。反対に、行き当たりばったりで物事を処理していると、ストレスは増大していきます。なぜかと言うと、一つ一つの事は大したことはなくても、三つも、四つもの事が一度に重なってくると、誰でも処理しきれなくなるからです。

 

やるべきことをスケジュール化すると、処理すべき事柄が一度に重なってしまうことを避けることができます。また、手間のかかる大きな事柄も、幾つかの小さい部分に分けてしまい、スケジュールの中に落とし込んでいけば、ストレスも減らすことができます。

 

中・高校生だって、見かけほど暇ではありませんよね。やるべきことが重なって、ストレスが増大ということも結構あるでしょう。心身の健康のためにも、できれば、そんなことは避けた方がいいですよね。

 

受験勉強、部活動、学級や生徒会活動、学校行事、等の学生生活に関わる諸々の事柄を無理なくこなしていくための、更に効果的なスケジュールの立て方を知りたい方は、「とね臨床心理士事務所 カウンセリング・オフィス ZEN」にご相談ください。ストレスを減らす様々なテクニックをお伝えします。

 

  • 周囲からのサポートを強化する

 

「何でも自分一人でやらねばならない!」ということはありません。それどころか、自分一人で出来ることなど、たかが知れています。人の力を借りた方が、よい仕事ができます。

 

自分一人でできないときには、周囲の人の力を借りましょう。困難に出会ったときに、誰にも相談しない、助けを求めない、等は「セルフ・ネグレクト」と言って、よくないことです。

 

困ったときは、お互い様です。周りに助けを求めましょう。助けてもらったら、「ありがとう!」と感謝を伝え、その次は、何かのときには、お返しに、あなたがその人の手助けをして差し上げれば、よいのではないでしょうか。あるいは、別の人に、恩返しのお裾分けをすれば、よいのではないでしょうか。

  • 人のために役に立つことをする

人間が一番幸せを感じるのは、人のために何かをしてあげて、よかったなと、心から感じることができたときではないでしょうか。聖路加国際病院名誉院長で、現在、103歳の現役医師である日野原重明先生も、自分の命(限られた自分の持ち時間)を人のために使うことが、人間が幸せになる最短コースであることを言っておられます。

 

「命とは時間そのもの。それを誰かのために使うときは必ず訪れるのであり、そのときのために、今、この瞬間に生かされる。(日野原重明)」)

 

わが国には「情けは人のためならず」という、素晴らしいことわざもあります。人のためにして差し上げた善行は、回りまわって必ず自分の所に帰ってきますよ、という意味なのですが、これにはもっと深い意味が秘められていると思われます。

 

つまり、もっと深く考えると、自分の行った善行が自分の所に戻って来ても来なくても、どちらでもよい。そんなことよりも、人のために役立つことのできる自分が、今、ここ、この宇宙に確かに存在したという事実に出会うことができた。

 

そのような、損得を超えたところにある、人として本当に大切な価値、すなわち自分の存在価値に目覚めることができた。そのことが幸せなのだ、と教えているのかも知れません。

 

こんな世界観を持てた人は、本当の意味で幸せな人ではないかと思います。私も、その境地を目指したいものだと思います。
 

 

by Konomachi Inc.