第61回日本連合教育会研究大会・山口大会 「青年教師の会」
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子どものための東洋的セルフ・コントロール法
臨床心理士 刀 根 良 典
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Key word: 立腰教育 子どものメンタルヘルス 姿勢と身体感覚へのawareness
【問題と目的】
情緒の安定を欠いてしまった落ち着きのない児童生徒、自分の感情・行動が年齢に相応しい程度に自己コントロールできない児童生徒、等をどのように支援していくかについては、昔も今も、多くの現場の教師が課題としてきたところである。
加えて、すべての子どもに関わる「心の健康」の維持増進に関しても、近年、その対策の充実は喫緊の教育課題の一つとなっている。
それらへの有力な方法の一つとして、「立腰教育」をベースにした「子どものためのセルフ・コントロール法」を開発し、実践した。その一部を紹介する。
【研 究 Ⅰ】・・・学校等で子どもにも実施可能な心身一如の「セルフ・コントロール法」の開発
自律訓練法、立腰教育、岡田式静座法、等の心身一如の考え方に立つ方法をベースにして、刀根が以下の方法を開発した。
実施方法は以下の言語教示(シナリオ)を児童全体に聞こえるように読み上げ、師弟同行で約2分間行う。
本法の実施により、身体が楽になり、呼吸が調い、心も自然に調ってくることが体験される。
①腰骨を立てます ②両手は膝の上に置きます ③上体は、天地を貫いて、まっすぐに伸びています ④肩・首筋は楽になっています ⑤腰、下腹(臍下丹田)に気力が満ちています ⑥素晴らしい姿勢です ⑦気持ちが落ち着いています(AT・自律訓練法「背景公式」から) 【この後、自律訓練法やフォーカシング、マインドフルネス瞑想に移ることも可能。】 |
図1 本法を実施しているときの児童の姿勢
【研 究 Ⅱ】・・・集会活動における実践例
①対象 山間部にある小規模校。児童数18名。
②方法 毎週1回、全校で早朝に10分間程度行われる「さわやかタイム」という集会活動の終わりに、本法を約2分間実施した。また「さわやかタイム」の時間以外にも、学級に於いて授業の始めなどに実施した。
③結果 本法を体験した児童の感想の一部を紹介する。
●気持ちが落ち着き、頭がすっきりして勉強しやすくなった。頭がよくなった気がする。前より気持ちが落ち着くのが早くなった気がする。
●立腰をやったときとやらなかったときは違っていて、やったときは集中力が上がって勉強に励めます。心が爽やかになって心地よい。
●気持ちが落ち着きます。呼吸が楽になります。
●身長が伸びたような気がする。食べる量が増えたような気がする。
●集中力が前よりも続くようになってきた。肩や首筋が楽になり姿勢がよくなった。勉強が頭に入ってきた気がする。前には分からなかった事が思い出せた。
●姿勢がよくなり、勉強に集中できる。鼻づまりが少なくなり呼吸が楽にできる。
●腰骨に筋肉がついた感じがする。さわやかな気持ちになれる。頭がすっきりとしてきた。呼吸が静かで楽にできる。授業中に眠たくならなくなった。
●姿勢がよくなりました。背中が曲がっていたときより呼吸が楽になりました。姿勢がよくなると給食などの食べる量が少し増えました。頭が少しよくなりました。
【考 察】 児童の感想だけでなく、教師の観察、日頃の授業評価からも、本法の実施により、児童の「情緒の安定」「心の健康増進」「知的活動力の向上」等によい効果が現れる事が推測される。
本法は学校で実施しても、あまり不自然さはなく、教育関係者に「セルフ・コントロール法」への関心を持ってもらうことにも有効であると思われる。
このような「セルフ・コントロール法」が学校や子どもの教育場面に普及していくならば、先生方や子どもたちの心身の健康増進を手助けすることや、児童生徒の生徒指導上の問題を改善・支援することに繋がっていくと思われる。
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(注)本編は、刀根良典、他 「子どもにも実施可能な心身一如の「セルフ・コントロール法」として「姿勢」と自律訓練法の「背景公式」を小学生の児童に集団指導した事例」(第32回日本自律訓練学会・発表論文集)から関係部分を抜粋しリライトしたものです。