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【第9章】 森田理論と下村湖人の「次郎物語」に学ぶ人間の教育  ~「こころ」と「こころ」のふれ合うとき~ 

 

ZEN電子図書(CDブック)
とね先生の読むカウンセリングシリーズ(1)

森田理論で神経質は幸せになれる 

とね臨床心理士事務所/ZEN図書出版

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第9章 森田理論と下村湖人の「次郎物語」に学ぶ人間の教育

~「こころ」と「こころ」のふれ合うとき~

 

 

 

とね臨床心理士事務所 カウンセリング・オフィス「ZEN」主宰

臨床心理士 / 自律訓練法認定士 刀 根 良 典

 

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森田療法創始者の森田正馬の人間観と、「次郎物語」で有名な社会教育家の下村湖人の教育思想とは共通する部分が多いと言われています。特に、私どものような、森田療法を人間教育、あるいは人間の再教育法として研究・実践していこうという立場の者にとっては、下村湖人の教育思想は、森田理論の理解を深める上で大きな示唆を与えてくれます。

 

そこで、今日は、下村湖人の書きました「次郎物語」を通して、子どもの教育(人間の教育)について共に考えていきたいと思います。ただし、最初におことわりしておかなければならないことは、今日の話は、次郎物語の文学的な解説ではないということです。

 

次郎物語をヒントにしながら、人間の教育についての筆者の考えを述べさせていただきたいと思います。かなり我田引水の読み方をしているところもあるかも知れないと思いますので、そこのところを、最初におことわりしておかなければならないと思います。

 

●下村湖人の自伝的な小説

 

  次郎物語は、下村湖人の自伝的な小説だといわれています。このお話は、第一部の幼少年期から、第五部の青年期まであり、全巻を完成させるまでに一八年間が費やされています。一般的に次郎物語として多くの人々に知られているのは、第一部の幼少年期の部分ではないかと思います。

 

  これまで何度も映画になりましたし、テレビで放映されたこともありますので、あらすじは、すでに、ご存じだと思いますが、一部を簡単にお話させていただきます。

 

  次郎は、母親に母乳が出ないということで、生まれてすぐに里子に出され、「お浜」という小学校の住み込みの用務員さんの家へ、預けられます。

 

次郎が六歳になってやっと、乳母である「お浜」の家から、実の母親や父親のいる、本当の家に引き取られます。

 

次郎はその後、そこで育っていくのですが、次郎の立場から見れば、まったくなじみのない、知らない家に引き取られた形になります。「産みの親より、育ての親」という言葉がありますが、次郎は、当然の事として、育ての親である「お浜」に強い愛着を感じており、実の母親(お民)には、なかなかなじんでくれません。

 

母親(お民)と子供(次郎)の心は、葛藤状態になりますが、いろいろな出来事(特に肺病を病んだ母親の看病)を通して、最後には親子の心がやっと通じます。

 

母親(お民)は、次郎と「お浜」に、これまでの自分の誤りを詫び、息を引き取ってゆきます。第一部は物語としては、非常に暗いというか悲惨なのですが、一つの救いは、母親との心の通じ合いのプロセスが書かれていることです。最後には、次郎と母親(お民)の心が通じ合うところに大きな救いが感じられます。

 

●全ての子どもが本能的に求めているもの

 

  それでは本文に入りましょう。順序は前後しますが、「あとがき」から、その一部を、先に読んで みましょう。そこには、次のように書かれています。

 

 この物語が、まだ原稿のままだった頃、幾人かの知人にそれを読んでもらった・・・・・・一人は「次郎は変質者だね。」と言った。これには私はかなり考えさせられた・・・・・・・しかし、私自身には、次郎が変質者だとは、どうしても思えなかったのである・・・・・・・何かそうした病的な点が発見されるとすれば、それは全ての子供が、全ての人間が、本能的に求めている大切なものを、拒んではならない人によって拒まれているからだ、というほかにない。世の中にはどんな健全な人間をでも、一見変質者らしく振る舞わせる二つの大きな原因があるが、その一つは食べ物の飢餓でありもう一つは愛の飢餓である。 

 

  次郎は、表面的には可愛げのない、ひねくれた乱暴者です。親の期待どおりの行動をしてくれない。それどころか、いつ何をしでかすか分からないように見える子供です。今で言うと親に非常にストレスを感じさせる子供ですね。ここには「一見、変質者らしく振る舞わせる」というふうに書かれています。本当に手のかかる子供であります。このことを、どのように考えていけばよいでしょう。

 

  下村湖人は、すべての人間が本能的に求めている最も大切なもの、すなわち「食物」と「愛情」が飢餓状態におかれると、どんな健全な人間をでも、一見変質者らしく振る舞わせてしまうことを指摘しています。

 

 私は、森田療法の他に、ヒュ-マニスティック心理学も学んできましたが、このヒュ-マニスティック心理学の立場から見ましても、下村湖人の指摘している事項は重要であります。

 

ヒュ-マニスティック心理学/トランスパーソナル心理学の創始者の一人でありますマスロ-も、・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・(この後も、原稿は続いています。)・・・・・・・・・・・・

 

続きは、とね臨床心理士事務所から出版しています、ZEN電子図書(CDブック)第1巻「森田理論で神経質は幸せになれる」でお読みください。

 

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