昨日、森田療法の研究会で講話を行いました。最初の部分を掲載します。
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森田療法の研究会での講演(1)
●自分の講演を振り返るために
私の講演は、ほとんど全て録音しています。講演後に内容を振り返るためです。これが習慣になっており、気づけば何十本ものテープやICレコーダーの音声ファイルが溜まっています。自分の言葉や考えを後から反省し、修正することはとても重要だと感じて、このようなことを行っています。ですから、今日も講演を録音させていただきます。
●AIの驚異的な進化と仕事効率の飛躍
最近では、AI技術の進化が目覚ましいです。以前は、講演を録音し、それをテープ起こしするために誰かに頼んでいました。そして、そのデータを元に原稿を清書し、発見誌等の雑誌に投稿するという手順でした。ところが、現在はICレコーダーに録音した音声をAIに処理させれば、瞬く間にテキスト化されます。その精度は約95%に達し、人の手をほとんど介さずに作業が進むのです。
さらに、そのテキストをAI、具体的にはChatGPTを使って清書してもらいます。すると、驚くべき速さで原稿が完成します。これまでの100倍の効率で作業が進み、しかも私自身の言葉がそのまま反映されるので、著作権の問題も生じません。実際に、こうして完成した「白鳥蘆花に入る」という原稿をある雑誌に投稿しました。まもなく掲載されると思います。
このようにAIを活用すれば、驚くほどの効率で仕事が進むのです。この話題は森田療法とは直接関係ありませんが、もし現代に森田正馬先生がいらっしゃったら、こう仰るのではないかと思います。
「神経質者はAIの長所と短所の両面を理解し、上手に活用しつつ、神経質性格を活かして、他の人にはできない精度の高い仕事をし、社会で生き残っていくように工夫しなさい」と。
ただし、AIはただの道具に過ぎません。使い方次第で、良い結果にも悪い結果にもなります。このことを知って、上手な使い方を研究していく必要があります。特に、社会的な弱者になりやすい神経質者こそ、AIの使い方をしっかり研究して使いこなせるようにしていくとよいと思います。
その中でも、特にAIの出した答えをそのまま信じて受け入れることは避けた方がよいでしょう。その点、神経質で疑り深い神経質性格は、AI時代を生き抜く上での強みになると思います。
私はAIが清書してくれた文章に更に自分で手を加え、より自分らしい表現に仕上げています。それでも、従来の方法と比べて、作業効率が劇的に向上しているのは間違いありません。ここまで行ったとしても、AIの助けを借りることで、作業効率が従来のやり方比べて、主観的には100倍も能率的になり、仕事が非常に楽になりました。
●AIを上手に活用するには
神経質で疑り深い神経質性格は、AI時代を生き抜く上での強みになると思います。AIは様々な問いにも答えてくれます。ですがAIが出す答えをそのまま信じるのは危険なことが多いからです。AIの提供する情報は、インターネット上のデータを再編集しているに過ぎません。一見、正しいと思えるような答えを出すことが多い一方で、情報が古かったり、虚偽のデータが混じっている可能性もあります。
特に、悪意ある者が偽情報を、さも本当かと思わせるようにインターネットを使って流せば、AIの出す結果は大きく誤ったものになるかもしれません。AIはただの道具です。最終的に良い結果を生むかどうかは、他の道具と同じように、使う側の責任ということになるでしょう。
試しに自分の悩みをAIに聞いてみると、まあまあの回答が得られます。大体八割くらいは「なるほど」と思わせる答えが返ってきます。しかし、それはあくまで参考程度に留め、必ず自分の頭で吟味する必要があります。特に慎重で疑り深い神経質者は、AI時代は非常に合っていると感じます。
●子どもの教育とAI活用のこれから
次に、AIが子どもの教育に及ぼす影響について考えてみます。おそらく学校では、しばらくの間、AIを使って仕上げた宿題は受け付けないという方針が取られるでしょう。たとえば、夏休みの読書感想文も、AIを使えば数秒で完成してしまいます。課題図書を読まなくても感想文ができてしまうため、これでは本を読んで自分の考えを深めるという教育の本質が失われてしまいます。
しかし、先生方も賢いので、いずれAIを使っても簡単にはクリアできない課題を出すようになるでしょう。私はすでに教職を定年退職しましたが、後輩の先生方がどのようにAIを取り入れていくのか、楽しみです。もし希望があれば、現役の先生方と一緒に研究会を開いても良いと思っています。
●これまでの話のまとめ
AIは確かに便利であり、使い方次第で作業効率を劇的に向上させる力を持っています。しかし、AIに全てを任せるのではなく、その答えを吟味し、自分の頭で考えることが重要です。AIは道具に過ぎないので、最終的には使い手の判断が結果を左右します。現代の神経質者は、AI時代にこそ、その慎重さを武器にして、新たな道を切り開いていけるのではないかと感じています。
(次回に続く)