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【第4章】 神経質の悩みから立ち直るために

 

ZEN電子図書(CDブック)
とね先生の読むカウンセリングシリーズ(1)
森田理論で神経質は幸せになれる 
とね臨床心理士事務所/ZEN図書出版

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第4章 神経質の悩みから立ち直るために

 

とね臨床心理士事務所 カウンセリング・オフィス「ZEN」主宰

臨床心理士 / 自律訓練法認定士 刀 根 良 典

 

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  今日は、神経質症の落ち込みから立ち直るにはどうしたらよいかということを、森田理論に基づいて、話したいと思います。

 

神経質者の悩みというのは、一般的な言葉で言うと一種の精神的な「落ち込み」ですね。心の中に、困ったことが起こってしまって、なかなか立ち直ることが難しくなった状況ですね。

 

人間の心は「あまのじゃく」ですから、直そうとすればするほど、また、「かくあるべし」と作為すればするほど、かえって状況は悪くなっていくばかりです。その様子は、まるで、アリ地獄に落ちたアリのようでもあります。

 

  このようなとき、一人で抜けていかれる人もおられるでしょうが、誰か適切な人やグル-プの援助を受けた方が、早く立ち直れることが多いと思います。そういう意味で、お互いの助け合いで成り立っている、生活の発見会の集談会は、まことに得難い良心的な学びの場だと思います。

 

  さて、今日は、神経質の症状から立ち直るときに、役に立ちそうな知恵を、森田理論に基づいて八つ抜き出し、お話しさせていただきます。

 

 1 神経質の心の悩みの大部分は、現実(実生活)に、その根拠を持っています。多くの場合、実生活上の困難な問題に直面して、どうしていいか分からなくなったときに感じる不安な気持ちが、形を変えて固着したものです。 2 自分の意思でコントロ-ルできることに取り組みます。自分の意思でコントロ-ルできないもの、あるいはコントロ-ルする必要のないものは、そのままにしておきます。 

3 仕事はていねいに行うようにつとめます。それによって、神経質の心の悩みに向いた注意が、目の前の事柄に向かいます。その結果、「注意」と「病的な感じ」の悪循環が立ち切られます。

 

4 現実の事実(出来事)を、どのように受け取るかによっても、起こる「感じ・感情」は違ってきます。

 

5 いくら病的な感じが強くても、それが神経質症からきているのならば、病人のようなふるまいをせず、健康な人と同じような生活をこころがけます。

 

6 平等観に目覚めます。自分だけが苦しんでいるのではありません。悩んで生きることにおいて、人間は平等です。他の人は、ただグチをこぼしていないだけです。 

 

7 立ち直った人の事例を研究し、良いところは取り入れます。

 

8 「生命あるもの」には、自分の存在を建設的な方向に向け、ひたすら伸びていこうとする、基本的な働きがあります。

 

 

 では、これら8つのポイントに沿って、少し詳しくご説明をしていきます。

 

 

 

 1 神経質の心の悩みの大部分は、現実(実生活)に、その根拠を持っています。多くの場合、実生活上の困難な問題に直面して、どうしていいか分からなくなったときに感じる不安な気持ちが、形を変えて固着したものです。 

 

  いろいろな神経質の悩みは現実に根があるんです。ちょうど、物と影の関係が、現実の問題と神経質の心の悩みとの関係にあります。物にあたる部分が、現実の困難な問題です。影にあたる部分が、不安感や不快感です。

 

  神経質症になると、どうして問題がこじれてくるかというと、不安感や不快感、つまり影の部分にとらわれてしまい、現実の問題が見えてこなくなってしまうからです。

 

たいがいの方が最初は、こういう不安だとか、自分の心に生じた悩みだとか、自分の気分を、いろいろな方法で、やりくりしようとするんですね。しかし、こういうことは、いくらやっても根本的な解決にはならないのです。

 

  不安感、違和感、嫌な気分、そういうものを直接に何とかしよう、何とかしようとしても、これはなくなるわけがないのです。それは、ちょうど、物をそのままにして、影だけを消そうとしているのに似ています。

 

  では、どうすればいいかということなのですが、不安や、ネガティブな感情を、直接に取り除こうとすることをしないんですね。感情はそのままにして、実生活の方をきちんとしていこうとするのです。現実の問題を、一つ一つ具体的に解決していくということが大事になります。

 

  また、自分の物の見方にある「クセ」についても検討してみます。困難な問題が、自分の思い込みから起こっていることがあります。実際には、たいしたことはなくても、自分が、一つの思い込みを持ってしまっていて、簡単なことを非常にめんどうなものにしている場合もありますね。このような事がないかについても、事実に即して検討してみます。

 

  そのようにして、実生活を、建設的な方向に変え、充実させていくことによって、苦しさから抜け出すことができるのです。

 

  影(気分)の方にとらわれて、影を何とかしよう、何とかしようしようとしているときには、だいたい非建設的な生き方になってきています。特に、精神的に苦しいときは、悩むことに忙しいものですから、日常生活というのは、以外とおろそかになっている事が多いんですよね。

 

  そこで、影の方は、そのままにしておいて、現実の生活の方はどうなっているのかと、足元を見はじめたら、建設的な方向に向きはじめた証拠ですね。

 

決まった時間に起き、決まった時間に食事をし、部屋がちらかったらかたづけるという、あたりまえのことを、あたりまえに、きちんきちんとやっていくということが、現実の方に目を向けることになるのですね。

 

  それから、神経質の心の悩みというのは、少し自分を離れた所から客観的に見ると、非常に小さい事なんですね。小さいことなんだけれども、悩んでいるときには、その事が分かりません。

 

意識の中では、全世界と同じくらい大きな事になっています。世の中の不幸を、自分一人で背負っているような、悲壮な雰囲気がただよっています。

 

  ここに腕時計があります。これは、世界全体から見れば非常に小さいものです。だけど、目に近づけてみれば、自分の視野のほとんどを占めてしまいます。

 

ちょうど、神経質の悩みとらわれている状態がこれです。神経質の悩みのことが、自分の視野(意識)のほとんどを占めてしまって、他には何も見えないという状態になっているわけですね。

 

それが、少しづつでも、日常生活に目を向けることによって、神経質の悩みのことは、しだいに小さいことになっていきます。道は近きにありですね。日常生活は充実していますか?

 

 

 

 2 自分の意思でコントロ-ルできることに取り組みます。自分の意思でコントロ-ルできないもの、あるいはコントロ-ルする必要のないものは、そのままにしておきます。 

 

  自分の意思でコントロ-ルできるものは何か。それは、自分の行動です。自分の意思でコントロ-ルできないものは何か。それは、自分の感情(気分)です。また、自分の心の中に浮かんでくる想念も意思でコントロ-ルすることができません。

 

  感情や想念を、意思でコントロ-ルしなければならない、と思っている人は、自分に自信を失いやすいのです。できないことに挑戦していますから。ところが、気分の方はそのままにして、行動の方をコントロ-ルしようとする人は、自分に自信が出てきます。なぜならば、人間に可能なことを行っているからです。

 

  よく気分は気分、行動は行動と言いますよね。これは、劣等感に悩んでいる人にとっても、とてもよいアドバイスだと思います。

 

不可能に挑戦しないで、可能なことにエネルギ-を注いでいくわけですから、自信も回復してきます。気分と行動とを区別して、気分はそのままにして、行動に注意を向けていくと、いろんな「とらわれ」からも抜け出すことができます。ますます自由になってきます。

 

  そうは言っても、私達は生身の人間ですから、何かするときに「ああ嫌だなあ。めんどうだなあ。」と思うことがありますよね。そんなときは、嫌々やっていけばいいんです。めんどくさいなと思ったら、めんどくさいまま、やっていくのです。

 

嫌々しかたなしにやったのでは、能率は上がらないかもしれません。でも、やらなければもとのままですが、やればやっただけのことはあります。少なくとも、ゼロではありません。少しだけでも物事は片付いてきますし、はじめる前よりは、前進しています。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・(この後も、原稿は続いています。)・・・・・・・・・・・・

 

続きは、とね臨床心理士事務所から出版しています、CDブック第1巻「森田理論で神経質は幸せになれる」でお読みください。

 

 

 

 

 

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